ウソの統計と賃上げ偽装の関係
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」におけるウソの数値を公表し続けてきたことについては、まさに「唖然とする」としか言いようがありません。政府が発表している56の基幹統計のうち、22の調査に何らかの問題があったとのこと。「国家の信頼」を根底から揺るがずようなものと言っても過言ではありません。
そのデタラメな実態が徐々に明らかになりつつありますが、私の住む神奈川13区選出の甘利明衆議院議員の公式サイトにこんな記事がありました。
「14年前からこの方式が取られていたということですので、民主党政権の3年間も含めて内閣はそのことに気づいていなかったわけです。ただし、このことが明るみに出るきっかけは安倍内閣が全ての政府統計の正確性を検証し、より正確な政府統計データを作るべきだと提唱し、諮問会議でも麻生財務大臣から提言がなされたことを受けて調査した結果、発覚したということですから、そこは事実関係をしっかり認識すべきです。」

この文章の趣旨としては、「民主党政権でも気づいてなかったでしょ」という「ジャブ」と、決めの「ストレート」は、「安倍政権下だからこそ発覚した」。具体的には「麻生財務大臣から提言がきっかけ」というもの。
甘利氏がいう「諮問会議での麻生財務大臣からの提言」というのは、おそらく2015年10月16日の経済財政諮問会議。具体的には、
「毎月勤労統計については、企業サンプルの入替え時には変動があるということもよく指摘をされている。(中略) ぜひ具体的な改善方策を早急に検討していただきたいとお願いを申し上げる。」
というもの。どういうことかと言えば、

要するに、調査にあたっての事業所サンプルを入れ替えるたびに、過去に遡ってデータを修正すると既に公表した賃金の伸び率が下がってしまうということ。これでは、アベノミクスにとって致命的となります。
そして、その後厚労省は、サンプルを入れ替えても過去に遡ってデータを改定することを止めました。さらに、サンプル入れ替えを給料の高い事業所にすると当然ながら、伸び率は跳ね上がります。
さらに、今回発覚した勤労統計の改ざんを補正する「3倍補正」を、2018年1月からこっそりやっていましたから、さらに、さらに伸び率は跳ね上げります。
こうして、2018年「6月の名目賃金3.6%増 21年ぶりの高い伸び率」がまさに「演出」されたわけです。(多くの市民の方が「実感」がないのは当然)
https://www.asahi.com/articles/ASL8666S0L86ULFA02R.html
この名目賃金「3.6%増」は「速報値」で、「確定値」は「3.3%」。さらに今回ばれた「3倍補正」分を以前のデータに適用すると「2.8%」。さらに事業所サンプル入れ替え時の遡及補正すると「1.4%」となり、2倍以上のひらきがあることになるのです。また、名目賃金「1.4%増」が正しいとすれば、物価上昇分を差し引いた実質賃金は、おそらくマイナスでしょう。
厚生労働省は、一応、遡及改定していないものを「公表値」。遡及改定したものを「参考値」としてしていますが、公表値は算出方法の違うデータを比較したものなので,ウソの数字。(数学の嫌いな中3のうちの娘だってわかります)
麻生氏の「提言」は、果たして「正確な政府統計データをつくるため」だったのでしょうか? 実際は、「アベノミクスの効果による賃上げ」演出だったということではありませんか。
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