北朝鮮ミサイル発射に思うこと
昨日の朝、「おとうさん、なんか大変なことになっているよ。北朝鮮が日本にミサイルを撃ってきたと安倍さんが言っているよ」という長女(高2)の声で目をさますことに。彼女は、安倍首相の早朝の記者会見を見て、そう思ったようです。おそらく、多くの人々はこうした「理解」をし、「何か大変なことが起こった」という印象を持ったことでしょう。
後から、安倍首相の記者会見を確認してみると、確かに「我が国に弾道ミサイルを発射」と言い、さらに「我が国を飛び越えるミサイル発射という暴挙は、これまでにない深刻かつ重大な脅威」と言っています。

ところが、発射されたミサイルは日本領空通過前に、高度100km以上の宇宙空間に突入し(ニュースで繰り返された)「襟裳岬上空」では、最高到達高度550kmになっとのこと。つまり、「我が国上空」と言われているのは、どの国にも属さない宇宙空間で、「領空」ではありません。(それとも日本だけが宇宙空間も領空とみなすこととしたのだろうか) また、「我が国上空の宇宙空間」を通過したミサイルは1998年以来4回あり、安倍首相のいう「これまでにない」という表現の根拠は不明です。

今回北朝鮮が発射したミサイルは中距離弾道ミサイル(IRBM)、北朝鮮と日本の距離を考えるならば、IRBMを使うにはあまりにも近すぎるわけです。(より射程の短いノドンなら話は別だが) よって、今回のミサイル発射を「我が国に弾道ミサイルを発射」というのは正確ではなく、その意図は、アメリカに対するメッセージを一段とエスカレーションさせたものと見るのが常識的なものではないかと思います。
もちろん、今回のミサイル発射(実験)が、北東アジアの緊張緩和と非核化という観点からすれば、問題であることは間違いありません。では、どのように対処すべきなのかという問題において、興味深い記事がありました。ジャーナリストの高野孟氏の「INSIDER」というメルマガ。一部を引用しますと、
錯乱に陥りつつある日本の「北朝鮮脅威」論
──米朝対話を「思いとどまらせる」という日経の異常な主張日本経済新聞8月25日付の「読み解きポリティックス」欄の「米朝対話で置き去り?/日本狙うミサイル、拉致問題」という記事には、かなりビックリした。
米朝が軍事対決を回避して対話による問題解決に踏み出すようなことになると、米国はICBMの脅威から逃れるけれども、日本を狙う短・中距離ミサイル能力は残るし、拉致問題と核・ミサイル問題の同時解決を主張してきた日本の立場も弱まってしまうので、「こうした(日本)置き去りリスクが起きないよう日本は米国に思いとどまらせることができるのか」と同紙は問いかける。
これって、何を言っているのか自分で分かっているのだろうか。
米国はケリー主席大統領補佐官、マティス国防、ティラーソン国務の両長官を中心に「軍事的解決はありえない」という明確な基本認識の下、外交交渉による解決を模索しつつあり、その場合に、北に対して予め「核放棄」をしなければ交渉に応じないというクリントン政権以来の姿勢を覆して、「核凍結」さえすれば交渉に応じる──つまり北を〔かつての中国、インド、パキスタンなどと同じく〕核保有国であると認める──のかどうかに、議会を含めた議論の焦点は絞られつつある。
ところがそのように米朝が対話を通じて今の一触即発の危機を平和的に解決しようとすることに日本としては反対で、「思いとどまる」よう米国に働きかけるべきだというのが、日経の論調である。ならば非平和的解決があると言うのだろうか。異常としか言い様がない。
(中略)
米朝対話はひとたび始まれば、時間はかかっても、必ず38度線の休戦協定を恒久的な平和協定に置き換えて北と米国・韓国との国際法上の戦争状態を正式に解除するところへと行き着かざるを得ない。
その場合に、平和協定交渉の入り口で、“核放棄”ではなく“核(ミサイル開発の現状での)凍結”で構わないという条件が北に与えられることはあり得るし、また平和協定に伴う軍備管理・軍縮協定という出口のところで、一定の条件下で北を核保有国として認めた上で軍縮プロセスを設定するとの合意が盛り込まれることも大いにあり得ることである。
しかし、それは日本が「置き去り」にされるとかいう幼稚なレベルの話ではなく、日本がむしろ積極的に北の核・ミサイル問題の平和的解決を促す外交的努力に力を注ぎ、そのプロセスの達成に関与し貢献していくということでなければならない。
アメリカの「米朝対話」にむけた動きに、日本がそれを思いとどまらせようとする日経の論調に対するものですが、あながちこの動きは日経特有のものではなく、現政権や外務省の考えに近いのではないでしょうか。
ここで、思い出していただきたいのは2002年小泉首相が訪朝し合意した「日朝平壌宣言」。
「両首脳は、日朝間の不幸な歴史を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化関係を樹立することが、双方の基本的利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通認識を確認した」
として、
①植民地支配の反省とおわび。
②経済協力に関する協議
③国際法の遵守と互いの安全を脅かす行動をとらないこと。遺憾な問題(拉致問題)への対処。
④北東アジアの平和と安定の維持・強化。ミサイル発射のモラトリアム。
などが約束されています。このことは、当時小泉首相の副官房長官として同行していた安倍首相が知らないはずはありません。本来ならば、この「日朝平壌宣言」に基づいて、日朝交渉をすすめるのが日本外交の基本のはずです。
問われているのは、米朝対話においては朝鮮戦争の休戦協定を平和協定とし戦争状態を解消することであり、日朝対話においては戦後補償を行い、日本の国是である非核三原則のもと北東アジアの非核化(米、中、露、北朝鮮)を実現すること、いわば半世紀前の戦後処理をしっかりと行うことだと思います。
「軍事は政治の延長。政治は経済の集中的表現」
という普遍的真理をもとにこの問題を考えて行けば、誰が何のために緊張と戦争の危険性を激化させているのがよくわかります。
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