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2011年12月 6日 (火)

給食40ベクレルをめぐって

学校給食の放射性物質について、40ベクレルは食材使用の目安なのか、測定器の検出限界を定めたものなのか、文部科学省の通知をめぐって混乱しています。

発端は、11月30日付けで東日本の17都県(神奈川県と含む)の教育委員会に送付された通知。概要は以下のとおりです。

学校給食設備整備費補助金に係る事業計画書の提出について(依頼)

・補助対象経費:都道府県が購入した学校給食用食材の放射線検査機器

・補助金額:補助対象経費の1/2 都道府県負担分については、震災復興特別交付税により、全額措置される。

・補助対象経費の上限額等 2,750千円×5台=13,750千円

<事業を実施するにあたっての留意点>
・購入機種の選定
購入機種は、NaI(T1)シンチレーションスペクトロメーターを原則とする。検出限界は、40Bq/kg以下とすることが可能な機種とすること。
*現在、食品衛生法の暫定規制値の見直しが行なわれていることに鑑み、飲料水、牛乳・乳製品の現行の暫定規制値(200Bq/kg)の1/5である40Bq/kgに設定。

・検査結果への対応
市町村は、検査の結果、放射性セシウムが検出された場合の対応について、あらかじめ決めておくこと。例えば、40Bq/kgを検出限界としていた場合に、この値を超える線量が検出された際には、次のような対応が考えられる。
○該当する品目が1品目の場合には、その品目を除外して提供する。
○該当する品目が複数有り、料理として成立しない場合は、パン、牛乳のみなど、該当する献立を除いて給食を提供する。

・検査結果の公表
検査結果は市町村や学校のホームページに掲載することなどにより、品目名、測定結果、検出限界等を適切に公表すること。

この通知に対し、新聞報道などでは「従来より厳しい目安に各地の教委から問い合わせが殺到すると、文科省は同日『機種選定の目安を示したものであり、給食の基準を設定したものではありません』と2回目の通知を送った」(朝日新聞)とのこと。

確かに、この通知は測定器の購入補助についてのものであり、食品の放射性物質の基準を示したものではありません。しかし、「事業を実施するに当たっての留意点」では、「検査結果への対応」が例示されており、この「例示」が混乱のもとになったわけです。

もちろん私は現在の暫定規制値(飲料水など200Bq、その他500Bq)は高すぎると思っていますし、40Bqはそれに比べると「まだまし」だと思っていますが、今回の「問題」は、この「基準」(あるいは「目安」)ではないと思っています。

原則論で考えてみると、かつての「通達」と異なり、「通知」に強制力はありません。強制力を持たせようとすれば、法令による規定が必要となります。問題は、現在検討中とのことですが、食品安全法による暫定規制値がいまだにそのままになっていることの方です。だからこそ、今回の通知でも「例示」となっているのでしょう。誤解を恐れず言えば、現段階では、地方自治体が自主的に判断すればよいわけです。(情けないことにこれを地方自治体は一番嫌がりますが) ですから、別に文部官僚の肩をもつわけではありませんが、この点については、行政事務として別におかしいとは思いません。

一方、新聞報道では見られませんが、今回のことで一番問題なことは、「目安」ではなく、補助対象が1県あたりわずか5台という予算の方です。これでどうやって、県下の全市町村の学校給食の測定ができるんですか、ということです。しかも、例示されている「検査結果への対応」を見ればおわかりのように、事前検査を想定してます。事前検査の場合、座間市は給食は全校自校方式(各学校に給食調理室がある)ですから、各学校に測定器を配置しなければなりません。それが、「1県5台」ですからね。

また、最近は「給食丸ごと検査」という形で、1週間分の給食を冷凍保存し、まとめて検査機関等に依頼して検査をするというやり方をとっているところもあります。このやり方は比較的簡単に検査を実施できますが、当たり前ですが子どもたちが食べた後。文科省が例示しているようなことはできません。

要は、今回示されたような予算規模では、文科省が掲げる「学校給食の一層の安全・安心を確保することを目的とする」(補助金交付要綱)ことができないということです。

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