テポドン騒動に思うこと
昨日の朝刊各紙の1面見出しは「北朝鮮ミサイル発射」。この1週間、マスコミは北朝鮮の人工衛星用ロケットの発射報道一色でしたが、冷静さを欠いた報道に対し、私は大きな違和感を感じざるを得ませんでした。
実は座間市議会では、3月25日の本会議で「北朝鮮による気象衛星打ち上げの即時中止を求める決議」を賛成多数で可決しましたが、私と竹市議員は反対をしました。
この決議、「気象衛星打ち上げ」とマスコミで流布されているような「ミサイル発射」とは書かれてはいませんが、「気象衛星の打ち上げ」に対し、「国際法上からも許されない蛮行」として「厳重に抗議」と「即時中止」を求めています。
まず、「気象衛星の打ち上げが国際法上許されない蛮行」なのか、ということ。この論理だと、アメリカもロシアもそして日本も宇宙ロケットの発射を繰り返し行っており、「蛮行」を重ねていることになります。それとも、北朝鮮だけが行ってはならないという国際法があるのだろうかということ。今回、北朝鮮はあらかじめ宇宙条約・宇宙物体登録条約に加盟した上、実験期間と予想落下地点を国際民間航空機関(ICAO)と国際海事機関(IMO)に通告しており、国際ルールの手続きは踏んでいます。となると「気象衛星の打ち上げが国際法上許されない蛮行」というのは、事実に反することになります。
では、この決議文には書かれていませんが、「国連安保理決議に違反しているではないか」という点では、どうでしょうか。安保理決議第1695号では「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止」、同1718号「いかなる核実験又は弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求する」となっています。この安保理決議違反という論理は、「人工衛星ロケットと言っても、使われるのは弾道ミサイルであり、実質的にはミサイル実験だ」ということ。確かに宇宙ロケット技術は、軍用ミサイルに転用可能ですが、それは、日本がロケット実験をしても軍用ミサイルに転用できる技術蓄積になるのと同じで、(事実日本の核武装化に向けた実験という指摘もある)自家撞着に陥ることになります。
ここで思い出さなくてはならないのは、軍事に対するものの見方。「軍事は政治の別の手段での延長である」(クラウゼビッツ「戦争論」)ということ。逆に言えば、政治によって軍事=戦争を押し止めることができるということ。北朝鮮の政治的意図が自己の生き残りをかけた「瀬戸際外交」の一貫であるならば、それにMD計画に示されるような軍事を持って対抗するのは愚策としか言いようがありません。
ところが今回、自民党内からは「迎撃だ!」という「軍国おやじ」連中の「勇ましい」掛け声に呼応し、麻生首相は自衛隊法第87条2の3項に基づく「破壊措置命令」を発動。まるでデモンストレーションのようにPAC3やイージス艦による「ミサイル防衛体制」のPRが進められました。しかし、「誤報」といい、政府筋が吐露した「当たらない」発言など、巨額の税金をかけながら、それこそ費用対効果のないシロモノだということが、明らかになったわけです。
北朝鮮の政治的意図が「瀬戸際外交」なら、それに対抗する日本の政治的意図は、麻生首相の支持率回復に向けたパフォーマンスと「ミサイル防衛」のデモンストレーション。これでは、北朝鮮の「核開発の意図」を防ぐ政治とは言えないでしょう。
米・中・露という核保有国の狭間で、核による「恐怖の均衡」ではなく、東北アジアの非核化に至る政治のイニシアティブを取ることができるのは、本来なら被爆国日本であるはず。それが、政治の果たすべき役割だと思います。
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