ここ数年、福祉の分野では「介護・保健・医療の連携」あるいは「ネットワーク」という言葉が多用されています。意義としては、福祉・医療分野での「縦割り」の弊害をなくし、対象者に対する総合的なケアを提供するというものだと思いますが、もう一つの背景としては「措置制度」から「契約制度」への転換があると思われます。
「措置制度」とは、業界用語解説風に言えば、「介護サービスを行政が職権で決定する行政処分」。行政の「措置義務」に基づくもので、サービスは予算の範囲内で、困窮度に応じて、提供されるわけです。これに対し、「契約制度」では、保険料を拠出した者が保険事故(要介護状態)にあった場合、サービスが給付されるもの。(障害者自立給付は、保険制度ではありませんが、基本的な設計は契約制度に基づかれている)
措置制度時代は、介護サービスの提供などにおいて、「行政の責任」が伴っていたわけですが、契約制度となると、契約は当事者と事業者。行政は、保険運営が主な役割へと変わっていきました。要は、措置制度時代は行政が「ケアマネージメント」と「コストマネージメント」に責任を負っていたのが、契約制度では「コストマネージメント」しか責任を負わなくなったいうことです。その結果、ケアマネージメントは、責任主体がなくなり、介護事業者・病院などが横並びになるため「ネットワーク」「連携」という概念でしか、表現出来なくなったというのが実情だと思います。
その結果どうなったのか!ということが今日のブログの本題なんですが、はっきり言って私が体験したのは、「連携」という名のもとでの「無責任体制」です。重度の全身性マヒで24時間介護が必要な対象者の場合、在宅ケアをしようにも、介護保険の上限額では、完全介護は家族介護なしには不可能。しかも、今回の介護保険法改定で1時間以上の継続介護は、受ける事業者がいません。(6/27付けブログ参照) こういう場合でも行政は、直接介護サービスに責任を負っているわけではありませんから、どうすることもできません。
一方、、障害者自立支援法には「重度障害者包括支援」という新メニューがあり、難病などの重度患者を対象としています。この場合、介護保険と自立支援給付、さらに医療保険の訪問看護など3つの制度の併用できることになっていますが、だれがケアマネージメントの責任者になるのか?定かではありません。まず介護保険を優先して使うことになるのですが、上限額約36万円は毎日2~3時間程度。大半は上限額のない自立支援給付となりますが、介護保険はケアマネージャーが制度化されていますが、自立支援法では法定化されていません。では一体誰が、3つの制度を運用して総合的なケアプランをたてて、サービス提供を行うのでしょう?そもそも、この「重度障害者包括支援」を行う事業者が座間市や近隣の市町村に参入していなければ、使うこともできません。
では在宅ケアは、困難だとして病院や施設入所する場合も、看護士の配置基準からして、24時間完全介護は不可能。病院へ入院している場合、介護保険を使ってヘルパー派遣を頼むことはできませんから、介護保険外で10割負担。しかも重度患者に対応できるヘルパーもそうそうおらず、結局家族がついていなければなりません。
さらに施設入所にしようとしても、空きがなければ入れませんが、空きがあったとしても入所できるかどうかは、何回もの「判定会議」を経て、やっと入所許可。公立の施設ですが「対応できない場合は、お断りします」と言われました。入所にあたって病院と施設で「連携」があるかと思えば、見る限り全くなし。病院・施設双方が家族に問い合わせてくるので、家族はまた一から施設側へ状況を話さなければなりません。移動の手段・段取りも家族が手配。どちらも「責任を持って」という姿勢はありません。
以上、長々とした話となりましたが、これは全てこの数ヶ月、私たち家族が実際に体験したことです。身をもって、「介護・保健・医療の連携」などというものは存在していなかったということを体験しました。しかも、職業柄、制度を徹底して調べ、役所や事業者への対応に慣れている私ですら途方に暮れることの連続でしたから、普通の人がやる場合はもっと大変だと思いますし、その壁に泣かされてきた人はたくさんいるのではないでしょうか。
「介護の社会化は、道遠し。」というのが率直な感想です。厚生労働省は、高齢者介護にしても、障害者介護にしても、「制度の持続可能性」といいますが、制度は残っても、対象者が持続不可能では、何の意味もありません。